「だから均衡なの。たとえば、沙杏ちゃんが海の王家に嫁ぐじゃない? そして、子どもが生まれたら各家と交換されて、さらに混血される。それで血の均衡を保っていくわけ。これまで永きに渡り、そうされてきた伝統のシステムだ。嫁取りはお祭りみたいなもんだね。ちなみに、花嫁を得た王家は100年栄えるっていうジンクス付きだから、各王家が必死で嫁取りするんだ」

するんだ、じゃ、ない……。
人の人生を……お祭りの景品みたいに扱うのは…やめてほしい。

「海底、地底、天上。それぞれ属する場所で、派閥争いとか、事情がいろいろあるから、できるだけ花嫁獲得したいんだよ」

「うちもこの間クーデター起こった。未然に防げたけど。ちょっと気を抜いているとすぐコレだもん。やんなるよな~。あ、この映画見たい。沙杏、コレ見ていい?」

「…え…あの…」

戸惑っていると、背後からすっと顔と声が近寄った。

「…花嫁殿。掃除はどこをすればいい…?」

「あ、オレもやるよ。そうだ、今日の寝る所どうする? アトリ、シン」

僕ベッドじゃないと眠れないから、と、勝手にDVDをプレーヤーにセットしながら、天鳥が答える。森さんはどこでもいい、と呟く。

「…え、ええ! い、居座る気なの?!」

「もちろん。それがいやなら、今すぐ選んで?」

「…え…選んだ! 誰も選ばないっていう選択肢!!」

「却下」

きっぱりと言い放った私より…きっぱりと笑顔で切り捨てられた…。