「だって、向神家の娘だろう?」
「……? 何ですか、ソレ……。は、初耳なんですけど…」
「あれ? これちゃんと口伝されてないのかな? まぁいいや。向神家の娘は、100年に一度【地上の花嫁】として、いずれかの王家に嫁いでいる。…事の起源を話そうか?」
「…い、いえ…。結構です。…ちょっと私…そろそろ容量オーバーっていうか…おなかいっぱいっていうか…。すみませんが、帰ってもらえませんかね?」
何度目かの『お願い帰って』に、凪世が呆れたような顔をした。
天鳥はさっきから、人の家のローボートから、DVDを漁っているし。
森さんは、じっくりと、腕を組んで私の背後に立ったまま。
「しつこいね、君も」
「あの…それって、…絶対なんですか?」
「そう」
「本当に…絶対? 私じゃなくちゃ、だめ?」
「絶対だめ」
「…あの…断った場合は?」
「拒否権はないって。でも、多分、均衡が崩れて、世界的規模で環境被害が出る」
「え。だって、どこかの家に嫁いだら、どこかの家には嫁がないじゃないですか」

