海に花、空に指先、地に霞



「…よく、ない……」

「沙杏?」

「…どうでもいい、なんて、思ってないくせに……。天鳥…、私が前に、みんなのこと、馬鹿みたいっていったら、すごく怒ったじゃない……」

それは最初。
一番最初。
初めて、みんなを追いかけて走った、夜。

「ちゃんと…王様の仕事…、大事に思ってるんでしょ?」

さっきだって。
辛そうにしていた。
廻す輪が脆くなってるって。

それに……本当にどうでもよかったら、花嫁なんて欲しがらない。

「……そうでしょ?」

「さぁ…どうかね」

天鳥は。
誰にも気がつかれないように。
ひっそりと細い吐息を。


「……いつか……会わせてよ。ずっとずっと、……ずっと先でいいから」


私は祈るように。
目を伏せる。

瞼の裏に、星空が焼き付いていた。

「輪を……廻して…いつか…。もう1回……家族に、会わせてよ…。楽しみに、してるから」

ギュウッ…と。
重ねた手に力を込めて。