海に花、空に指先、地に霞


…そのとき、カクンッと左足が何かに取られた。

「ッ…!」

「…っと。大丈夫?」

それまで盛大に笑っていた凪世の手が、瞬時に私の腕を強く掴んで、引っ張り上げた。

…また、転ぶかと思った。
一瞬、呼吸が止まった。

「あ、ありがと…」

詰まった息を解すように、支えてくれた凪世にお礼を言うと。

「どういたしまして。……で?どこが気をつけてるって?」

そう、意地悪そうに、からかうように言われた。

凪世とふたりで、ただいまを合唱させる。

すると、待ち構えていたかのように、リビングから天鳥が顔を出した。
開口一番に文句を放たれる。

「おかえり。ちょっと沙杏、この間のDVD、どこやったの?」

映画俳優の名前とタイトルを言われて、私は少し思案する。
靴を脱ぎながら。

「え? …ああ、アレか。ごめん、貸しちゃったよ」

「は?! 何考えてるの、僕まだ観てないのに!馬鹿じゃない?!」

「何それ! アレは私が買ってきたの! なんでそんな文句言われなきゃなんないの?!」

「も~、ほんとに気が利かないんだから。後でビデオ屋行くからね。一緒に来て」

「何でよ?!」

本当に、天鳥は映画とかドラマが好きだ。
暇さえあれば、テレビに向かっている。