「ライカ」
「うわはいっ」

 電話を終えたベリルがおもむろに問いかける。

「北はどっちだ」
「えっ、えと……あっち?」

 瞬間──

「きゃあ!」

 ライカは驚いて身を縮めた。スローイングナイフ(投げ用ナイフ)を投げつけられたのだ。

 顔の真横に投げられたナイフは、壁に見事に突き刺さっている。本気で殺すつもりじゃないのは解っていても、充分に恐ろしい。

 ベリルに視線を移すと、静かに怒っている瞳が見つめていた。

「明日までに方角を完全に把握しておけ。でなければ次の作戦には連れていかん」

「ええええ!? 明日っ?」

 ライカは愕然とした。この12年、方角を掴めなかったものが突然、明日までに把握しろだなんて……きっと俺を連れて行く気なんて無いんだ。

 ライカは卑屈になって別の部屋でいじけていた。

「いいの? あれ」

「いつまでも人に頼っていては覚えるものも覚えん。奴は、自分が周りに甘えている事に気付いていない」