「……」

 なるほど……奴らの逃走経路を誰かが遮断しているのか。聞き耳を立てていたロッシュが納得した。

 しかし……それは、数百人単位で人を動かすという事だ。そんな規模を動かせる人間など、いただろうか?

「……まさか」

 ロッシュは、一瞬脳裏に過ぎった人物を振り払う。

 奴が来るハズがない……俺は、奴と喧嘩別れしたんだからな。


 それは数年前の事──ベリルの計画にロッシュは異議を唱えた。

 犠牲者が出るかもしれない計画だった。

ロッシュは「もっと確実な作戦を」と彼に訴えたが、ベリルはこれが最良だと言った。

 それ以来、彼はベリルとは組んでいない。

 後に聞けば、その計画で犠牲者は1人も出なかったらしい。

 だが、それは結果論だ。犠牲者が出るかもしれない作戦を、黙って見過ごす事は出来なかった。

 いや、解っているんだ……あれが、本当に最良の作戦だった。