序~弐

 霞ヶ城――
 別名『二本松城』、『白旗城』とも言い、二本松落城悲史としても有名な城。
 戊辰戦争と言う激動の時代の只中にあったこの城も、今ではひっそりと佇み、桜や躑躅が咲き乱れ、市民の憩いの場となっている。
 僕は今、霞ヶ城の中を一人で歩いていた。
 僕が最初にこの地を訪れたのはちょうど一年前。あの時も季節は春。そして今と同じように桜が咲いていた。
 僕はゆっくりと坂を登っていく。
 ただ、一年前と違うのは、満開の桜。そして僕一人だけと言うこと。
 僕は坂を登りきり、街を一望できる所まで来る。
 そこで僕は足を止める。そして街を眺めようと身体を向ける。
 温かな柔らかい風が僕の身体を通り抜けていく。