玖

「俺は杏と約束したんだ。今年の雪祭りを二人だけで見に行こう。って」
 男はもう一度空を見る。
 テレビ塔は日と光を浴び、赤は明るさを増す。
「俺は約束を守りたい。杏に謝りたい」
 時計はもうすぐ一時を示そうとしている。
 約束の時間まであと少し。
「僕がその想いを導くよ」