「想い、君は霊と呼んでいるけど、それには大きく分けて二つの種があるんだ」
 男は僕を見る。
 僕は続ける。
「一つは、自分が死んだ事を知らない者」
 男は口を開け、僕の後を続く。
「二つ目は自分が死んだ事を知っている霊だろ?」
「そう」
 僕は頷く。
「言わなくても、そのことは俺が一番よく知っている」
 太陽が雲から出、光を送る。
 また輝きだした雪で作られた物達。
「彼女は死んだ事を――」
「勿論分かっている。でも杏はまだそのことを受け止める事が出来ないでいる」
 男の眼から悲しみの色は消えない。
 男は話しを続ける。
「俺はずっと俺の持つ能力の意味が知りたかった。何で俺だけに見えるのか、何で死んだ人間がこの世に残りたがるのか」
 いつの間にか雪が止んでいる。
「俺は昨日アンタが羨ましかったんだ。俺は霊が見えるけど、見えるだけで霊と話すことが出来ない」
 男は顔を僕に向け、
「もし話すことが出来れば、俺の疑問も少しは答えが分かったかも知れない」
 悲しそうに微笑む。
「でも、もう俺には関係の無い事だけどな」
 僕は城を象った雪の塊を見る。
 冷たい空気を吸い、口を開く。
「僕は知っているよ」
 その男の疑問に答える。
「彼等がこの世界に残る理由を。それは、」
 僕の仕事を終わらせる為に。
「強い想いがあるから」