「そう!前にね、うんと中学校二年生の時だったかなあ?職業体験学習って言う授業があってね、あたし達の班は近くの保育園に行ったんだ。そしてね、そこで働いている人達を見て、ああ、こういう仕事もいいなあ。って思ったんだ」
 女の子の表情は、懐かしいな。と言う表情へと変わる。
 電車は走り続ける。
「あっ!見て見て!七つ目のトンネル!」
 女の子はまた前を指差す。
『次の駅は、』
 その放送と共に、七つ目のトンネルへと入って行く。
『お降り口は右側です』
 女の子は、ほらね。と言う表情を作る。
「凄いね。ピッタリだよ」
 僕は女の子に笑いかけながら言う。
 女の子は嬉しそうに笑顔を作る。
「次の駅からも、トンネルがいくつあるか、教えてあげようか?」
「いくつだい?」
 電車はトンネルを抜ける。
「ええっと、次は確か……四つ!」
 女の子は右手の指を四本立てて答える。
 電車はスピードを落とし始める。
「ねえねえ、次の駅からはお客さん乗ってくると思う?」
 僕の顔を覗き込みながら聞く女の子。
「君の予想は?」
 逆に聞く僕。
「あたしは、一人くらいなら乗ってくると思うんだけど」
 電車は無人駅へと入って行く。
 乗客は僕と女の子の二人だけ。