雷鳴の夜

室内をひとしきり暴れまわる大男。

獲物を逃がしてしまった鬱憤を晴らすように、今度は壁に両手をつき、何度も何度も自らの頭を叩きつける。

驚いた事に、その行為で砕けていくのは大男の頭ではなく、コンクリートの壁の方だった。

強烈な頭突きの震動で部屋が揺れているようだ。

天井から埃が舞い落ちて、私達の頭に被さる。

「……!」

私はそれでも両手で口を覆い、必死で悲鳴を堪えた。

狂っている。

あの大男に、既に人としての理性などは存在しなかった。

いや、元々人間だったのかどうかさえ怪しい。

そう思わせるほどの、異常な行動だった。