雷鳴の夜

答えに満足したのか、私には目もくれず歩き出す男。

その背中は隙だらけで、あまりにも無防備だった。

何の疑いもなく、私が降りてきた階段を上がっていこうとする彼に。

「あのっ」

私は声をかけた。

「あぁ?」

肩越しに私を睨む男。

ひと睨みされただけで、足が竦んでしまう。

「あの…そっちは…階段を昇った所に鉄扉があって…でも外から南京錠がかかってて…扉が開きません…よ…?」

だからここまで私は降りてきたんです、と。

恐る恐る言ってみる。

「……」

しばらく黙考していた男だが。

「何だ…そうなのかよ」

彼は無造作に頭を掻いた。

「俺も本調子じゃねえしな…鉄扉を抉じ開けるのは、ちと無理か…」