雷鳴の夜

「……」

無言のまま、男がギロリと私を睨んだ。

その眼光に竦み上がる。

普通の生活をしていて、こんな視線に出会う事はまずない。

明らかに堅気の人間の眼じゃない。

真っ当な生き方をしている者の眼じゃない。

どこか道を踏み外した、常軌を逸した人間の眼…。

これまで向けられた事のない視線に、耐えられずに思わず目を閉じてしまう。

しかし。

「…成程な」

何か納得したように男は言葉を発すると、私に背を向けて歩き出した。

「あんたこっちから来たのか?て事はこっちに出口があるって事だな」