雷鳴の夜

拳は10型の顔面に打ち込まれていた。

血飛沫が舞い、鼻は折れるどころか奥にめり込む。

人造人間同士の戦いは、肉体の損傷具合も常軌を逸していた。

ただの殴り合いで、肉体がこんな風に壊れるなんて聞いた事がない。

だけど更に驚くのは。

「ぐはっ!」

ヴィクターの拳を受けて、そこまで損傷されつつも、痛みすら感じていないかの如く反撃する10型だった。

確かあのファイルによると、10型は『暴走』していると書かれていた。

暴走。

私はただ理性や感情がなくなる状態だと思っていたけど…もしかしたら神経系にまで異常をきたし、痛覚なども麻痺させる状態なのかもしれない。