目の前を逃げまどう脆弱な小動物の如き人間を、嬲りたい、弄びたい、縊りたい、悲鳴を上げさせ、捕食したい…!

全ての生物の本能の奥底に等しくある残虐性を剥き出しにして、10型は執拗に私達を追跡してくる。

「もっと走れ!捕まりてぇのか、あんた!」

先行するヴィクターが私に向かって叫ぶ。

「だ…だって…!」

もうすっかり息は上がっていた。

これでも全力で走っているつもりなのだ。

だけど、私にとってこの一夜は余りにも色々あり過ぎた。

たった一晩で、狂気と、恐怖と、戦慄を、一生分使い果たしたような気分。

そんな疲労困憊の状態で、更に全力疾走を求める方が無理というものだった。