ギブス

柚葉は、自分をまっすぐに見つめる諒の瞳から、逃れるかのよぅに…、視線を反らした…


『…あ、違うんです…
あの…、昔…家出した時に、逢った人に…似ているよぅな気がして…
も、随分前で…顔も忘れちゃってて…
ただ…、雰囲気とか…声が、先生に…似てるよぅな気が…』


そぅ、しどろもどろに…言った柚葉…

そぅ…、言い終わると同時に…柚葉の顎先は、諒の手に捉えられ…引き上げられた…


「お前…、やましいコトがないのなら…
話す相手の方を見て…話せよ…っ!」


『……っ』


そぅ…、持ち上げられ…向かせられた顔に…、一気に鼓動が早まった…


『…あ…っの…っ』


「…そぅだょ…
俺が…、お前があの時に逢った…男だ…っ」


その瞬間に…、走馬灯のよぅに…脳裏に駆け巡っていった記憶…


その、記憶の中…

夕暮れを過ぎ…、月明かりが照らす神社の境内で…

抱き合っていた男女…、ゆっくりと…スローモーションのよぅに…地面に倒れた女性…


その、女性を覗き込むよぅにした幼い自分…


頭の上から、聞こえた声に…、その顔を上げた…


口元に着いた血液を制服の袖で拭った少年…



月明かりの下に照らされた…その、少年の顔が…、目の前の男性と重なる…