‐放課後‐

 ‐保健室‐


『……っ』


ゆっくり…と、瞼を開けた瞬間…

心配気に、自分の顔を覗き込んでいる人物に、柚葉は両目を見開いた…


「…大丈夫かっ」


その、至近距離…に、近い顔に…、驚きの余り…言葉も出ない…


『…お兄ちゃん…っ』


微か…に、握りしめられている手の温もりを感じた…


「柚葉、具合が悪いなら…家、帰るかっ」


その、意気込みに押されながら…柚葉は、何とか身体を起こした…

ふ…っと、気がつくと…、柚葉の右手を握りしめているのが裕隆だと気がついた…


『…お兄ちゃん、ずっと…あたしの手、握ってたの』


その、柚葉の問いかけに、裕隆は、微かに首を傾げながら…


「…あぁ、お前が倒れた…って、櫻井先生から聞いて…
退屈な授業、抜けてきちゃった…っ」


…と、苦笑いを浮かべた裕隆の言葉を、柚葉は無反応で受け止めた…


『………』
【…眠りに就いてから…

先生が…、ずっと側にいてくれている…と、思った…


ずっと…、手を握りしめていてくれたのも…

先生だ…って、思っていたのに…っ】