「あ~あ。なんか勘違いしてるだろ。」
 ???
「別に寂しいとか思ってないし。父親がいなくても全然平気。」
 …嘘だ。
「むしろあいつらの喧嘩を見なくていいんだから良かったし。嫌いなんだよ、あいつら。」
 そんなわけない。
「離婚してくれたおかげで俺も気がラクになった。」
「そんな風に言わないで。」
 気が付けば私は泣いていた。泉が強がってるように見えるから。こんなに近くに住んでいたのに、泉の抱えていた不安に早く気付けなかったから。
「お父さんとお母さんの事、悪く言わないで。泉の大切な家族だよ。」
「…。」
「一緒にキャンプ行ったり、ご飯食べたりしたじゃん。良い思い出だっていっぱいあるでしょ?」
「そうだよ。離れてたって家族じゃないか。泉にとってはたった一人の父親だよ。嫌いなんて言うな。」
 瑞穂も強く言った。
「はぁ~。」
 泉は大きな溜息をついた。
「わかったよ。…だからもう泣き止めよなぁ、明日香。お前が泣くとこじゃねーよ。」
「だって…」
 涙が止まらないんだもん。私にだって、泉のお父さんとお母さんとの思い出がいっぱいあるの。だから寂しいんだよ。
「俺が泣かしたみたいで後味悪いな。」
「お前が泣かしたんだよ。」
 瑞穂の辛口は少しウケた。
「泉…夏休み終わったら、ちゃんと学校来てね。」
 ずっと言いたかった事がようやく言えた。泉は無言で頷いてくれた。