トリプレ

 函館である程度観光名所を見た後は、自由行動になった。さて、どこに行くんでしょうね?
「龍神さんは行きたいとこないの?」
 班長の大宮恵那。初めて話し掛けられた気がする。
「別に、どこでもいい。」
「じゃあ赤レンガ倉庫ね。」
 赤レンガ倉庫で私以外の班員5人は、楽しそうに買い物していた。私も何か買った方がいいだろうか?お父さんとお母さんにお土産買わないとな。あとは泉のお父さんとお母さん。いつもお世話になってるし(本人には世話になっていない。)、あとじいちゃん、ばあちゃん。何買おうかな…?
「ねぇ、龍神さん。」
 大宮恵那が私の腕を引っ張る。
「みんなには黙ってサブちゃんのとこ行かない?」
「え?」
「どこでもいいんでしょ。」
「でも、他の人たち心配するんじゃ…。」
 私はともかく大宮恵那がいなくなったら、大変な事になるんじゃないのか?
「だって、みんなにサブちゃんのとこ行きたいって言ったら笑われるかもしれないでしょ?」
「そうじゃなくて…」
「あとでメールしとくからさ。」
 強引に大宮恵那は私を連れ出した。
「なぜサブちゃん…」
「実は私、演歌大好きなんだよね~。これもみんなには内緒だけどね。」
 私にはいいのか?
「親がずっと演歌聴いててさ、その影響でね。ずっと行きたかったんだよね~。」
 そうですか…。
「誰とも趣味が合わなくてさ、なぁんか虚しかったんだよね。」
「私の趣味とも合わないよ。」
「龍神さんはどんな音楽好きなの?」
「フォーク系?」
「渋いじゃん。」
「演歌も渋いよ。」
「フォークも渋いって。」
 大宮恵那はゲラゲラ笑った。私と話してこんなに笑った人を見たのは久しぶりだ。