トリプレ

 ロビーに置いてけぼりにされた私達の前には、ソファーに一人で座る瑞穂がいた。
 泉の意図がわかった。それはきっと琉璃も同じ。
 私達は自然と瑞穂に近付いていた。
「何してんの?」
 琉璃が話し掛ける。瑞穂は驚いたのか、プレーリードックみたいに振り向いた。
「誰かと思った。ビビらすなよ。」
「ビビらすつもりはなかったんだけど。」
 私と琉璃は瑞穂を挟んで座った。
「…何?何で座ってんの?」
「いいじゃん。たまには姉妹水入らず?って事で。」
 琉璃もきっと気を遣っている。
 瑞穂にはきっと居場所がないんだ。それを私も琉璃もわかっていた。
 そうだね。人の恋路を手伝ってる場合じゃないかもね。告白はやっぱ一人でするものだもん。
 私が瑞穂の立場だったら、やっぱり独りは寂しい。誰かにいてほしい。
「泉がね、三つ子はエスパーの力で繋がってるって言ってたんだよ。本気で言ってたよ。」
「バカだな。そんなわけあるか。」
 瑞穂が笑った。
「でも私、三つ子パワーで運命の人に出会えたかもしれない。」
 琉璃ったら、もう次の恋を見つけたの?
「三つ子パワーって何だよ?」
「知らない人から間違われて声を掛けられる…みたいな?それが運命の出会いだった…みたいな?これ三つ子パワーじゃん。」
 まだ運命の出会いを経験していない私にはわからない。そもそも三つ子で良かったな、って思った事はない。瑞穂や琉璃と比べられて嫌な思いしかしていない。
「三つ子パワーは意味わからんけど、明日香と琉璃には感謝してるよ。」
『え?』
 私も琉璃もビックリ。
「私は友達と仲良くできる明日香が羨ましいし、素直に恋愛できる琉璃も羨ましい。でも暴力女を避けないでいてくれるのは明日香と琉璃だけだ。」
 私の方こそ勉強のできる瑞穂が羨ましいし、琉璃の明るさが羨ましい。だけど私は、二人に感謝した事なんてない。
 瑞穂がそんな風に思っていたなんて。三つ子じゃなきゃ良かったと思っていた自分が恥ずかしい。
「何があってもこの縁は切れないんだから、避けたりするわけないじゃん。」
 琉璃の言葉も私には新鮮だった。
 私達はエスパーじゃないけど、縁で繋がっているんだね。