トリプレ

 夜景は確かにキレイだった。だけど、私に落ち着いて見ている暇はなかった。
 え~とアヤベ君…アヤベ君…どこにいるの?他のクラスもいて、展望台が人で溢れているよ。しかも地味にカップル多い…。
「あっ明日香!ちょうど良いとこにいた。写真撮って。」
 琉璃に捕まってしまった。今それどころじゃないんだよ!
「はい、チーズ!」
 撮ってあげるけどね。
「おい、明日香。」
 げっ…この声は、泉!
「なっ何?」
「コーラ買ってきて。」
 またコーラかよ。自分で買ってこいよ。
「今忙しいから…」
「あ?」
 うわぁ怖い!
「人を探してて…」
「誰?」
「えっと…泉の知らない人。」
「誰?」
「え…」
「誰?」
 にっ睨まないでくださーい!!
「アヤベ君…」
 言っちゃった。でもスズカが告白するとは言ってないからね。
「アヤベって同じグラスじゃん。俺も知ってんだけど。何嘘ついてんだよ、明日香のくせに。」
 明日香のくせにってヒドイ。
 あ~早くしないと、スズカが待ってるよ。
「アヤベに何の用?」
「い…泉には関係ないよ。」
「ふ~ん。」

 結局、スズカの『夜景をバックに告白』は未遂に終わってしまった…。
「ごめんね、ホントごめんね。」
 帰りのバスの中で私はただただ謝るばかり。
「明日に賭ける。」
 それでもスズカは諦めていなかった。そこまでの強い意志があるなら、一人で告白すればいいのに。