雪がちらつき始めたらあっという間。もう外は一面銀世界。
 寒いなぁ…。
「寒いね。」
 講習の帰り。紘貴の顔は寒さで赤くなっている。
「受験、自信ある?」
「全然。瑞穂は?」
「紘貴よりはあるかな。」
「何それ。」
「紘貴はさ、何で勉強するの?」
「それ瑞穂に言われるの?」
 やっぱ変か…。
「俺は…小学校まともに行ってないからさ。あんな家庭だったもので。勉強全然出来なかったんだよね。」
 紘貴の新しい真実。話の内容とは裏腹に紘貴は笑っていた。
「前の学校では、いじめられてたんだよ。」
 信じられない…。
 そういえば、前の学校の話を聞いた時、はぐらかされたっけ。
「叔父さんに預かってもらってるのに、しっかりした子供じゃなきゃ迷惑掛けると思って、一生懸命勉強した。転校を機に明るい人間になろうと思って、ちょっとイメチェンしてみた…みたいな?」
「じゃあ今の紘貴は、本当の紘貴じゃないの?」
「どうかな?」
「また、はぐらかした感じ?」
「俺、みんなに優しくして好かれるようになって、学校が楽しいと思えるようになって…でもこれって偽善かなとか考える時はある。」
 以前、「瑞穂に偽善は通用しない」って言ってたっけ。あれの事か?
「好かれるために優しくする…って偽善じゃない?」
「意味がわかんないな。それの何が悪い?好きな人には優しくするもんじゃないの?紘貴が偽善者だなんて考えた事もない。」
「瑞穂って…。」
「ん?」
「…何でもない。怒られるだけだ。」
「は?」
 紘貴が何を言いたかったのかは、さっぱりわからない。
 どーせ、くだらない事だろうけど。