1週間後。久しぶりに紘貴が登校してきた。
 前よりはやつれているけど元気そうだ。良かった。安心した。
 クラスメートが次々と紘貴に話し掛けていた。なにせ3週間ぶりだからね。人気者は違うな。
「瑞穂、ちょっといい?」
 紘貴はクラスメートの輪から出て来て言った。
 廊下の端までやってきた。さすがに誰もいない。
 紘貴の手首にはまだ包帯が巻いてあった。傷が治っていないんだ。私も未だに独眼竜だけどさ。
「ごめんね。色々迷惑掛けた…。怪我もさせちゃった。」
「あ~気にすんな。これで三つ子の区別がつきやすくなったって評判なんだから。」
「だけど…痕残るんだってね。」
「まぁこれで結婚出来なかったら紘貴に責任取ってもら…」
 ヤバッ!ついつい、この前のお父さんの冗談が口から出てしまった!本人を前にこの冗談は笑えねー…。
「ウソウソ。気にしないで。」
 慌てふためく私。絶対顔赤くなってる。
「じゃあ結婚出来なかったら教えて。」
 紘貴の方が一枚上手のようだ。
「紘貴の傷は大丈夫?」
「うん。」
「良かった…。紘貴がいなくなったら私だって寂しいよ。本当に無事で良かった。生きててくれてありがとな。」
 紘貴は恥ずかしそうに笑った。