トリプレ

 相良君が学校に来たのは、それから1週間後だった。
 手首には包帯が巻いたままだったけど、表情は少し明るく戻っていた。
 相良君はわざわざうちのクラスまで来て私を呼んでくれた。
 廊下で、他の子の視線を浴びながら話した。
「本当にごめんね。謝って済まないと思うけど。」
「ううん。相良君が、こうして学校に来てくれただけでも嬉しいよ。」
 顔が赤くなってきているのがわかる。緊張する…。
「そっか。怪我は大丈夫?」
「私はどこも怪我してないの。平気だよ。」
「良かった…。」
 相良君の笑顔を見て、一瞬由衣ちゃんがよぎった。優しい笑顔だ。この笑顔で二人は支え合ってきたんだ。
「相良君…由衣ちゃんのいない世界でも、相良君を必要としている人はいっぱいいるよ。だから、お願い。生きてね。」
「…うん。ありがとう、明日香。」
 初めて明日香と呼んでくれた。