トリプレ

 由衣ちゃんは最後にこう言った。
「由衣が死んだら、お兄ちゃんを助けてあげて下さい。もう由衣には時間がないから。」
と。

 私達は限りある命を生きているのに、その実感は薄い。なんでも先延ばしにする事も出来るし、また明日ねと手を振る事も出来る。
 だけど由衣ちゃんは、そんな時間の中では生きていない。
 明日にはどうなっているかわからないんだ。そこに相良君もいる。由衣ちゃんの命をずっと見守ってきたんだ。
 相良君はすごい。自分よりも妹を守ってきた。その力は私なんかが及ばない。そこまで大切にしてきたものが…もうすぐ失われてしまうかもしれない。
 その時、相良君を助けられるかな。相良君の全てを知って、全てを受け入れたいと思っていたけど、好きならばそれが出来ると思っていたけれど…あまりにも大きくて深い悲しみに、なんて言葉を掛けたらいいのかもわかんない。
 結局、私には何が出来るんだろう。