「まさか、こんなにも早くお前の口からその言葉を聞けるとはな」

まるでゲームに勝利したかのような明るい口調。
私のこと試していたの?

「……いい加減にしてよ」


「──渉」


「私は本気だから!……だから美由紀の本気、教えてよ」


もう誤魔化し合うのはたくさん。このまま『ゲーム』が終わってしまっても、何かが変わる予感はしていた。

「……人は人を簡単に裏切る。どんなに信頼していてもな。裏切の恐怖に俺はいつも怯えていた」

「裏切り?」

「俺の母さんは小さい頃、愛人と一緒に失踪した。あの日──最後に見た母さんの笑顔は『偽り』だったんだよ」

今、彼が何を思い出しているのか分かった気がした。
多分、
きっと──。

「私はここに居る。美由紀の傍に居るから」

「……渉」

美由紀はずっと辛かったんだ。
その辛さが少しでもいい、和らげることができるなら。
それが私の役目なら──、

「あとは美由紀が決めることだよ」

私を選んでほしい!そう言いたいのに言えなかった。
言ってしまったら、美由紀を追い詰めてしまいそうで。
彼をこれ以上苦しめたくなかった。

「……俺はお前に感謝している」

「?」

「お前が居なかったら陸上も諦めていたし、考えを変えることもなかったと思う。それに渉は誰よりも俺のことを理解してくれた」

「……」

覚悟はしていた。何を言われても絶対に動揺したりしないって。

「お前の──渉の全てを俺にくれ」

「美由紀……」

私たちの恋愛『ゲーム』は終わりを告げた。
それはハッピーエンドというエンディングで。