恐怖 DUSTER

「その時にね、突然バスの後ろのほうが爆発したのよ」


「私と母が座っていたのは、バスの真ん中あたりの席だったからいきなり火に包まれることはなかったけど、後ろの席にいた人たちは、瞬く間に焼かれていったわ・・・」



「まだ、生きていた人たちも何人かいたのよ・・・でも、怪我していて身動きできなかったから生きながら焼かれていったのよ・・・」


「地獄のような光景を目の前にして、私はなんとか母を連れ出そうとしたわ」


「このままだと、母も焼かれてしまう。・・・そう思ったから・・・」


「でも母は、私をかばって体中を打ち付けて骨折してまっていたから動けなかったの・・・」

「私は、周りに助けを求めたわ。でも誰も助けてくれなかった・・・」


「動ける人は炎を見ると、みんなバスから逃げ出して行った」


「私が何度も助けてと叫んでも、誰も振り返りもせず逃げ出して行ったのよ!」



麻美の口調と表情が、憎しみと憎悪に変わっていくように弥生は感じた。



「炎はどんどん迫ってきて、私はなんとか母を動かそうと一人で必死に頑張ってたの」



「でも、母を動かす事はできなかったわ」



「当たり前よね、7歳の子供が一人で大人を動かす事なんてできるわけないものね」



「その時ね・・・母が私に息も絶え絶えなのに笑顔で言ったのよ・・・」



「私は、大丈夫だから逃げなさい・・・て」



「大丈夫な分けないじゃない。体中怪我して身動き一つできない状態で炎が後ろから迫っているのに」



「私は、泣きながら嫌だ、嫌だと叫んで母の体を動かそうとした・・・」



「でも、やっぱり無理なの・・・一人じゃ動かせないの・・・」



「その時ね・・・その時、私以外に母の体を動かそうとする手が見えたのよ」



「その手は、私と同じぐらいに小さな手だった・・・」



麻美は、弥生の手を取り敬う声で優しく言った。



「弥生・・・その手は、あなたの手よ・・・」