「お、女の子・・・今の声は、弥生の後ろにいる女の子の声・・・」



麻美は、自分にしか見えない弥生の後ろの女と顔を合わせている。

しかし、女の視線は感じなかった・・・?

女の顔には、口と鼻はあるのだが目が存在しなかった。




「め、目が無い!弥生の後ろの子には目が無いよ!」


「ま、まさか!手で隠している弥生の目が無くなって、この子にいってしまう!」


裕子が麻美に怒鳴りつけるように言った。

「ば、ばかな事を言わないでよ!なんで弥生の目が無くなるのよ!」


「だ、だって、姿かたちは現れているのよ!」


「顔には口も鼻もちゃんとあるのに目だけが・・・目だけが無いのよ・・・?」


「弥生の目をふさいでいるのは、その目を完成させるためなんじゃ・・・」





麻美の言葉で、弥生の心は恐怖の極限に来てしまった。


そして追い討ちをかけるように女が弥生の耳元でささやいた。


「麻美ちゃんの言うことは、正解だよ」


「私ね、ずっと何も見えなかったの・・・」


「真っ暗な場所で、たった一人でいたの・・・」


「でもね・・・でも、弥生ちゃんの目を隠したら、私の周りがゆっくりとほんの少しづつ明るくなってきてるのを感じるの・・・」



「まだ、はっきりと見えないけれど、あと少し・・・」



「あともう少し・・・あともう少しで・・・この暗闇から抜け出せる・・・」



「弥生ちゃんの、代わりに明るい光を見ることができるの・・・」



「弥生ちゃん、目をちょうだいね・・・?」



「もうすぐ、弥生ちゃんの目は、私の目になるのよ・・・」




「い、いゃー!」




弥生は叫びながらその場で崩れ落ちるように失神してしまった。



「や、弥生、しっかりして!弥生、弥生てばっ!」




懸命に叫ぶ恵子の声も、弥生にはもう届かなかった・・・