恐怖 DUSTER

「でも、裕子が入れ替わった後に記憶が戻ったら私たちから離れようとしないかな?」


千恵の疑問の問いかけさえも予測していたかのように、麻美は素早く答えた。


「離れようとするでしょうね。でも、逃がさないわ・・・裕子の父親も既にうちの会社に再就職させる予定でいるから、裕子はどこにも逃がさない・・・」


「えっ!麻美は裕子の父親が今日帰ってくることを知っていたの?」


千恵と里美は同時に驚きの声を上げる。


「当然よ、言ったでしょう!裕子の未来は、私がみちびくと。裕子の家庭環境は常に調べているから・・・」


千恵と里美は、用意周到な麻美に恐れと感心をいだいていく。


「父親が人質みたいなものなのね。・・・でも、よくあの男を麻美のお爺さんの会社に就職させたわね?」


「千恵の言うとおりよ」


麻美の行動が理解できない千恵と里美であった。


「なんで?・・・うちの会社にいれば監視もしやすいじゃないの」


「そうなんだろうけど・・・」


「なに?」


「麻美は平気なの?・・・あの男が自分のうちの会社で働くなんて・・・」


「平気よ。裕子の家庭には平穏で穏やかになってもらわなくちゃ困るのよ」


「平穏で穏やかに?」


またもや自分達には全く理解のできない麻美の思考に、千恵と里美は驚く。


「麻美なに言ってんの?なんで裕子の家庭を平穏で穏やかにするのよ!」


麻美は、ぞっとするような笑顔をしながら答える。


「だって、裕子の家庭が平穏で穏やかになればなるほど、私たちと接する裕子は苦しむ事になるじゃない・・・」


「家庭が平穏で穏やかだと裕子は苦しむの・・・?」


「そうよ・・・だって自分の家庭は幸せになっていくのに、自分の親が起こした事故が原因で死なせた相手が自分の親友たちの家族だと知り、毎日顔を逢わせるのよ」

「・・・裕子は必ず、心苦しく感じていくわ・・・」

麻美の決意と憎悪は、自分達よりも深く大きなものなのだと千恵と里美は知るのであった。