恐怖 DUSTER

「ねぇ・・・やっぱり弥生と恵子には何も言わないの?」


控えめに小さな声で、里美が麻美に向かって問いかけた。


麻美は、後ろを振り返り弥生と恵子の方に視線を向ける。


お互いの距離は、まだ離れていた。


麻美は視線を里美と千恵に向けると、少し強い口調で言った。


「弥生や恵子には何も言わなくていいわ。あの二人には直接には関係ないことだし」


「・・・関係ないってことはないんじゃないのかな・・・?」


千恵の言葉に、麻美はさらに強い口調で言う。


「弥生も恵子も裕子に対する思いは、私たちとは全く違うから関係ないって言っているのよ!」


麻美の言葉には有無も言わせない力強さがあった。


「・・・私も麻美の言うとおりだと思うよ・・・」


里美が麻美に同調するように言うと、千恵は戸惑いの表情になる。


「恵子は、心の入れ替わりには関係していても、あの事故とは直接関係ない立場だし、弥生は事故の被害者ではあるけど、私たちのように大切な家族を失ったわけじゃないから、思いの強さが根本的に私たちとは違うと思うの・・・」


千恵を納得させるように、優しい口調で里美は言った。


「里美の言うとおりよ。私たち三人の思いは一緒でも弥生と恵子は違うから、私たちには決して同調してはくれないわ!それでは私たちの計画も台無しになってしまうのよ」


弥生に対して特別な感情を持つ麻美が、弥生の存在を否定するように話す言葉には、千恵を十分に納得させる力があった。


「わ、解ったわよ。裕子に対してはあくまでも私たちだけで事を進めるって事ね」


「そう、私たち三人だけで裕子の入れ替わりを成功させるのよ。なんとしてもね・・・」


麻美の言葉には固い決意があった。


麻美にとっての入れ替わりという存在意義は二つあるのである。


一つは、あの事故の日に出会った弥生との再会。


もう一つは、自分達にとっては忌まわしいあの場所に、心を閉ざし自ら留まり眠り続けている、最初の裕子の心を入れ替わらせることであった。