恐怖 DUSTER

裕子は里美から借りた自転車に乗ると、改めて麻美達に視線を向けて笑顔で言った。


「私の分も弥生の誕生日を祝ってあげてね♪」


「大丈夫だって。麻美が裕子の分もオツリがくるほど弥生の誕生日を祝うから♪」


茶化したような口調で言う千恵の言葉を無視しながら、裕子をせかすように麻美が言った。


「ほら裕子、早く帰ってあげなよ。お父さんも裕子にすごく会いたくて待ちわびているでしょうからね」



「麻美ありがとう!それじゃあね♪」


自転車をこぎだし嬉しそうに立ち去って行く裕子の後姿を、麻美たちはいつまでも見つめていた。


その瞳には、先ほどまで裕子に向けていた情愛の思いは欠片も無かった。


「そうか・・・裕子のお父さん今日帰ってくるんだ・・・」


里美が静かにつぶやいた。


「たった7年で、出てきたんだ・・・」


千恵の声には生気が無かった。


「二人とも、裕子や弥生や恵子の前ではそんな顔をしないでね」


感情の無い人形のような表情をしている千恵と里美に向かって麻美が忠告するように言う。


麻美にそう指摘されて、千恵と里美はお互いの顔を確認するように見つめあった。


「本当にお願いね。特に裕子はまだ入れ替わりがすんでいないんだから不信がられても困るからね」


「わ、解っているって。大丈夫、裕子たちに気取られるような事はしないから」


「なんか、千恵が言ってもあまり説得力無いわね・・・」


「だ、大丈夫だって!麻美の計画を潰すようなヘマはしないから心配しないで」


そう主張する千恵を麻美は無言で見つめている。


麻美の疑念の視線に戸惑う千恵を援護するように里美が言った。


「千恵には、私がいつでもついているから心配しないで」


「・・・里美がついているなら、まぁ大丈夫かな・・・」


その麻美の言葉に、千恵は不満を感じつつも安堵した。