恐怖 ＤＵＳＴＥＲ

弥生にも恵子の心情は理解できた。


弥生にしても、前の弥生の心を消し去ってしまった事に自責の念を持っているのだから。


しかも恵子にとっては、自分の子供の子孫であるかもしれない子らの心が消えるのを黙ってみていたのだから、罪の意識は何よりも大きいのであろう。


「・・・だから、私も消えるの・・・」


恵子が、ぽっりと言った。


弥生は、恵子になんて声をかけて良いか解らず沈黙してしまった。


そんな弥生を気遣うように恵子が笑顔を向けて明るい口調で言った。


「弥生に話を聞いてもらって、なんだかスッキリしちゃった♪」


「あっ！でも、いま話した事はみんなには内緒だからね？私と弥生の二人だけの秘密にしといてね♪」


明るい表情の恵子とは対照的に、弥生の気持ちは沈んでいた。


「もう、！弥生ったら！そんなに暗くならないでよ？・・・私はいなくなるけど、恵子がいなくなるわけじゃないんだから！」


「で、でも・・・恵子の誕生日が終わったら、新しい１４歳の心の恵子になって、今の恵子はいなくなってしまうんでしょ・・・」


「大丈夫だって！私に関する事や入れ替わりの記憶は失くすけど、今まで弥生達と経験してき、た楽しいことなどは全部記憶しているから。・・・弥生と同じようにね♪」


弥生は思いつめたように恵子に向かって、心の奥底に留めていた思いをぶつけた。かた


「恵子は、そんな生き方をしていて辛くは無いの？誰にも本当のあなたの事を知られずに、ずっと他人の人生を生きて、それであなたは生きていると言えるの？」


言い終わった後に、弥生は後悔した。



・・・私は、バカだ・・・



二人の時間が、沈黙の壁にさえぎられるように止まってしまった。



・・・本当に、私はバカだ・・・



自分のその言葉が、恵子を深く傷つけてしまうことは十分解っていたはずなのに、感情のおもむくままに言ってしまった自分の愚かさを、弥生は胸の奥で何度も責め続けた。