恐怖 ＤＵＳＴＥＲ

「・・・そう、異常な死なのよ・・・」


お菊は、恵子が他人と入れ替わる中で唯一、入れ替わった後の古い体が新しい心で生まれ変わる事ができなかった存在であることは恵子から聞いているが、その死がなぜ以上になるのだろうか？


「弥生にも、お母さんがいるよね？」


突然、自分の母親の事を聞かれ弥生は戸惑った。



「えっ！お母さん？・・・いるよ、いる」


弥生は、前の弥生の心の記憶を瞬時に読み取り、母親の存在を意識した。


・・・お母さんだ・・・７年前と変わらない、私のお母さんだ・・・


入れ替わってから、母親の事を思い出す機会も無かった弥生は、改めて母親の存在に感動した。


「弥生、お母さんの記憶あるよね？７歳までのころのお母さんと、１４歳までのお母さんの記憶が？」


「うん・・・あるよ、お母さんいつもと変わらず優しい・・・」


母親との記憶の再会に感無量となる弥生であった。



「弥生とお母さんの生活は、何事も無くずっと幸せなんだよね？」


恵子にそう問いかけられ、弥生は無言でうなずいた。


「想像してみてくれる？その何事も無かった幸せな生活の日々に、ある日突然、弥生のお母さんが訳も解らず焼身自殺をしたら弥生はどう思う？」


恵子の恐ろしい言葉に弥生は唖然とした。


「・・・そ、そんなこと・・・想像できないし・・・したくない・・・」


「そうよね、ごめん・・・弥生も久しぶりにお母さんの事を思い出したのに嫌な事を聞いて」


「・・・でもね、お菊ちゃんの子はその異常な死を経験してしまったの・・・」


「私が、新しい子の体と入れ替わった後に、お菊ちゃんの体を焼いてしまったから、あの子は母親が突然焼身自殺をしてしまったと思い込んでしまった・・・」


「で、でも・・・焼身自殺することで母親を憎む事になるの・・・？」


恵子は無言で弥生を見詰めていた。


しばらくの沈黙の後、恵子は静かに答えた。


「親が自殺するとね、子供は二つのことを思い悩み始めるのよ・・・」


「・・・二つのこと・・・？」