恐怖 DUSTER

当時の事を思い出し、恵子の心は張り裂けそうな悲しみに覆われていく。


「・・・あの子は本当に良い子だったわ・・・」


「りっぱに家を継いで、嫁を貰い私に可愛い孫を授けてくれた・・・」


「・・・お菊ちゃんの孫をね・・・」



なにかと、お菊の事として語る恵子に疑問を感じる弥生。


「お菊ちゃんの孫じゃ無くて、恵子の孫でしょ?」



その言葉に恵子は強い口調で否定する。



「バカなことを言わないでよ!あの子は間違いなくお菊ちゃんの孫よ!」



「だ、だって・・・お菊ちゃんの心は消えてしまい、その後に恵子がお菊ちゃんとして生きていたんだから、その子は恵子の孫でしょ・・・?」


「違う!あの子はお菊ちゃんの孫よ!」



「・・・私なんかの孫であるわけが無いのよ・・・!」



「・・・私のような汚らしい女の孫じゃない・・・」



それほどまでに自分自身の事を忌み嫌う恵子の心情に弥生は悲しい気持ちになった。



麻美が恵子は、私達とは違うと言った意味のさらに奥深くの真実を弥生は知る。



・・・恵子・・・あなたはずっと、本当の自分としてではなく他人として、その人の人生を生きてきたのね・・・



・・・本当の自分としての人生を捨てて・・・