恐怖 DUSTER

「・・・でも、最初の子は・・・恵子がお菊ちゃんだった時の子は悲しんだの?」


恵子の表情が一段と暗くなり、重苦しい表情に変わった。


「・・・お菊ちゃんの心は・・・既に消滅していたから・・・」


「だから私が誰かと入れ替わってしまうと、お菊ちゃんの体は魂の無い抜け殻みたいなものになってしまうから・・・」


「・・・抜け殻・・・?」



「そう抜け殻に・・・私には、そんなお菊ちゃんには耐えられない!」



「・・・だから新しい子と入れ替わった時に・・・」



「・・・私は、お菊ちゃんの体を焼いたの・・・」



「焼いた!ど、どうして?!」



「言ったでしょ・・・私は、お菊ちゃんが醜くなるのには耐えられないと・・・」



「・・・だから焼いたの?」



お菊への恵子の思いはとてつもなく複雑な感情の思いが強かった。



「そうよ・・・私がお菊ちゃんの体からいなくなったら、お菊ちゃんは・・・お菊ちゃんの体は生きてはいけないもの・・・」



恵子の言葉に矛盾を感じた弥生は強い口調で言った。



「だ、だったら恵子はお菊ちゃんのままで生きていけば、子供とも別れること無く、お菊ちゃんの体を焼くこともしないですんだんじゃないの・・・?」



恵子は自分の手を眺めながら静かに言う・・・



「私は30年間お菊ちゃんとして生きていたけど・・・ある日ね・・・自分の手を見たらとても荒れ果てて汚い手になっていたのよ・・・あんなに綺麗だったお菊ちゃんの手が・・・」


「そして気がついたの・・・私はお菊ちゃんの体を汚していたんだってことに・・・」


「そ、そんなわけないじゃない!恵子はお菊ちゃんとして母としてちゃんと生きてきたんじゃない!」


「・・・ありがとう・・・弥生にそう言ってもらうと嬉しい・・・」


「だけど・・・あの時の私は、お菊ちゃんの体をそれ以上汚したくないという思いだけに囚われてしまい、全てを捨てると決めてしまったのよ・・・」