恐怖 DUSTER

恵子の瞳からは涙が溢れている、最初に分かれた子供の事を思い起こし泣いているその姿は、少女ではなく母親そのものに見えた。


「・・・どうしてその子との別れは、他の子達とは違う事になったの・・・?」


「私が新しい子と入れ替わる条件として、相手の心が壊れていることが必要なのよ」


「だから私は、戦争などのショックで心を壊してしまった子供を探した」


「そして・・・これは弥生も経験しているから解るわよね?」


「相手の心と記憶を吸収して入れ替わる・・・」


恵子の指摘に、弥生は記憶の奥底に封印しようとしていた前の弥生の事を思い出し心を痛めた。


「でもね、私が入れ替わった時期は早くて一年であったり、一番長かった時は30年以上も、その子として・・・その子の人生を生きていったわ・・・」



・・・その子の人生・・・?



恵子の言葉に不可解な思いが沸き立つ。




「・・・ねぇ弥生・・・何か気にならない?」



思いもよらぬ恵子の言葉に、弥生は思案する・・・?


「あっ!」


恵子が投げかけて来た問題の答えに弥生は気づいた。



「恵子!一年で入れ替わったって言ったわよね?・・・入れ替わった後のその子の体はどうなるの・・・?」



恵子は、くすりと笑い言った。



「どうもならないわ。私は、7年周期で現れるその子の新しい心に記憶を移してから新しい子と入れ替わるから、私が抜けた後は新しい心のその子が生きていくだけよ」



「・・・私が経験した記憶を受け継いでね・・・」





弥生は恵子が言った「子供達は誰も悲しまない」という言葉の意味を理解した。