恐怖 DUSTER

「弥生、どうしたのー?」


離れたところから麻美が声をかける。


我に返った弥生は、慌てて心配そうにこちらを見ている麻美たちに声をかけた。


「大丈夫!なんでも無いからー!」


「まだ、話は終わらないのー?」


あきらかに不満そうな声で麻美が言う。


「ごめん!もうちょっとだから待っててー!」


弥生の言葉に何かブツブツ言いながらも、先を歩き出していく麻美。


「・・・ごめん、恵子。大きな声出しちゃって・・・」


「ううん・・・弥生の言いたい事は理解しているから・・・でもね・・・まだ言えないけど、本当に悲しむ子は一人もいなかったのよ・・・それだけは信じて?」


恵子の真剣な訴えに、弥生はそれが真実なのであろうと感じとり、恵子に投げかけた言葉を後悔した。


「・・・あ・・・でも・・・あの子だけは・・・悲しませてしまったかも・・・」


何かを思い出したように恵子はそう言った。




「あの子って・・・?」


「最初の子・・・私がお菊ちゃんだった時に初めて産んだ子・・・」



「・・・最初の子・・・?」



「そう、最初の子・・・あの子との別れは他の子たちとは違ったから・・・」



「・・・違った・・・?」



「私は・・・お菊ちゃんの体が衰えていくのに耐えられなかった・・・」



「お菊ちゃんが、醜くなるのを見るのは嫌だったから・・・」



「あの子との生活を捨てて・・・入れ替わる事を選んだ・・・」




「・・・母であることも捨てて・・・」



「・・・あの子も捨ててしまった・・・」