恐怖 DUSTER

恐ろしい事を口にする恵子に、弥生は益々魔性の思いを強く感じていく。


「い、入れ替わるって、恵子には簡単な事なの・・・?」


恵子は、弥生の言葉にはっきりと不快の表情を見せて怒ったように言った。


「簡単なわけないじゃない!」


感情をコントロールできなかったのか、恵子の声は大きく響き渡った。


その声に、弥生たちから少し離れて前を歩いている麻美たち全員が驚き振り向いた。


「弥生!大丈夫?」


麻美が心配そうに声をかける。


麻美の声に素早く反応した恵子は、笑顔を向けながら弥生の変わりに答えた。


「大丈夫!大丈夫!話しに熱中しすぎて、つい声が大きくなってしまっただけだから」


そう言いながら、弥生に向かって視線を向けた。


その視線にうながされて、弥生は麻美たちに向かって言った。


「なんでもないよ!大丈夫だから、喧嘩とかじゃないから心配しないで!」


麻美の表情には不満の色が出ていたが、渋々ながら納得して再び歩き出して行く。


「弥生、ゴメンね大きな声を出したりして・・・」


「うううん・・・こっちこそゴメンね簡単なんて軽率なことを言ってしまって」


恵子は、しばらくの沈黙の後、静かに言った。


「・・・入れ替わるのってね・・・本当に簡単な事じゃないのよ・・・」


「特に、幸せに生きてきた場合はね・・・入れ替わるということは、その幸せを全て捨てるということなのだから・・・」


「・・・お菊ちゃんとして、最後まで人生を生きていこうとは思わなかったの・・・?」



「・・・最後まで人生を生きていく・・・?」



弥生の言葉に、きょとんとした表情を見せる恵子。



「どうして、最後まで人生を生きていかなければならないの・・・?」



「入れ替われるのに・・・?」



そう答える恵子に、弥生は曖昧ながらも魔性の正体がなんなのか解り始めてきた。