恐怖 DUSTER

「うん・・・大丈夫ちゃんと聞いているから!」


「じゃ・・・どこまで話したか言ってみて?」


恵子の唐突な質問に弥生は驚きの表情を浮かべた。


「・・・え、え~と・・・恵子がお菊ちゃんと入れ替わって・・・恵子の体が食べられてしまったところまでかな・・・?」


弥生が言い終わると同時に、恵子は両手をバツの形にクロスさせて言った。


「ブー!そこは、もうとっくに話し終わっているでしょ!」


「やっぱり、そのあとの事は聞いていなかったんだ!」


・・・あとのこと・・・?


自分は物思いにふけっていたのは、ほんの数秒の事に感じていたのだが、実際は数分もの間物思いにふけっていた事に弥生は驚いた。


「そのあとの事って?」


「だ~め♪もう言わないよ♪」


「そんな~!・・・お願い教えて?」


弥生は両手を合わせて恵子に哀願する。最初の恵子の出来事は全て知りたい要求に捕らわれている弥生であった。


恵子にしてみても、弥生には自分の全てを知ってもらいたい思いがあるので渋々同意するような仕草を見せながら再び話し始めだしていく。


「もう!今度はちゃんと聞いといてよね?」


「大丈夫!ちゃんと聞いているから」


「それじゃ、え~と・・・私がお菊ちゃんに入れ替わって、私の体が食べられているところからね」


「その状況をぼんやりと眺めていたら、お菊ちゃんのお父さんが身なりの綺麗なお侍さん達と一緒に現れたのよ」


「そして、私が入れ替わったお菊ちゃんの体を抱き上げて、本丸のほうに戻って行った」


「私は、なんて説明したら良いのか見当もつかず何日も何も語らずにいたのね、そのせいなのか回りにいる人達はみんな優しく接してくれるの・・・」


「誰かに大切に思われ大事にしてもらうなんて事は、生まれてからただの一度も、私は経験した事が無かったからとても嬉しかったわ」


「私という友達の悲惨な最期を目の前で目撃してしまった哀れな少女として、お殿様まで優しい言葉をかけてくれたのよ♪」


「お菊ちゃんに入れ替わる事で、私は幸せを手に入れたの!」


恵子の表情が再び高揚して行く事に不安を感じる弥生であった。