恐怖 DUSTER

信じられない恵子の言葉に、沈黙する弥生。

100人と入れ替わっていると言う恵子の存在は、既に弥生の思考の中では人智を超えた者と思えてきているのであった。


そんな弥生の目に恐怖を感じ取った恵子は、悲しそうな表情を見せた。


「・・・弥生。・・・私のことが怖い・・・?」


恵子にそう聞かれても、返す言葉を失い返答できない弥生。


「そりゃ、怖いわよね・・・100人もの別人と入れ替わって生きつづけている人間なんて化け物だもんね・・・」


弥生は否定したかったが、どうしても言葉が出なかった。


「・・・でもね・・・私は化け物でも悪魔でもない、ただの人間なのよ。あんまり説得力無いけどね・・・」


「そ、そんな!そんな事は思ってないよ。恵子が化け物や悪魔だなんて・・・」


心を振り絞り、沈み行く恵子の心情を慰めようと、弥生は恐怖を抑えて言葉をかけた。


弥生の言葉によって表情を和ませる恵子。


「ありがとう。弥生は優しいね・・・だから麻美は弥生の事を大切に思っているのね・・・」


弥生と恵子の前を、少し離れて歩いている麻美の背中を見つめる弥生の瞳は慈愛に満ちている。


「弥生だけに聞いてもらいたい事があるの・・・私の入れ替わりの最初の出来事を」


「・・・恵子の最初の入れ替わり・・・?!」


弥生の中で恵子に対する恐怖心よりも、最初の入れ替わりに対する好奇心の方が大きく支配していくのだあった。


弥生の瞳に恐怖の影が消え、興味の輝きが強くなっているのを熟知していたかのごとく恵子は微笑んだ。


「私が最初の入れ替わりを体験したのは、もう何百年も前のことなのよ」


「何百年も!・・・ねぇ、恵子の本当の年はいくつなの?」


「・・・もう、忘れてしまったわ・・・100人もの人間と入れ替わってきたからね。その人に成り代わって何十年と生き続けたり、時には途中で他の人に入れ替わった事も何度かあったから覚えていないのよ」




「・・・成り代わる・・・?!」


恵子の言葉によって、抑えていた恐怖が弥生の心の中で蘇るのであった。