「もったいぶらずに教えてよ?あの人って誰なのよ?」


「私達の入れ替わりにも関わりあっている人なの?・・・私の知っている人?」


懇願するような弥生の質問に麻美はゆっくりと答えていく。


「そう・・・あの人は、私達の入れ替わりに深く関わっているわ。入れ替わりの事や、その方法もね・・・」


「あの人はね、私達が生まれるずっと前から7年後とに起きる心の入れ替わりの事をよく知っていたのよ、入れ替わりの全てをね」


「私達の生まれる前から?・・・全てを?」


「そうよ、全てをね。私達のような不測の事態から起きる心の封印の事までもね」


弥生は、その人物の事がさらに知りたくなってきた。


その弥生の思いを感じたのか、麻美は意味深な微笑を向けて言った。


「もちろん、弥生もよく知っている人よ・・・」


「私の知っている人!」


麻美にそう言われて、弥生は自分の過去の記憶と前の弥生の記憶の中から該当するような人物の記憶を思い起こしていった。


・・・麻美の言うように、自分達が生まれる前から入れ替わりの事を知っていたのであれば、その人物は私達より年長者であろうから、もしかしたら・・・?


弥生は、自分の中で思い当たる人物の名をあげた。


「もしかしたら・・・あの人って麻美のお父さんなの?」


弥生の言葉に麻美は、一瞬驚いた表情をしたかと思ったらすぐに笑い出した。


「私のお父さん?まさか、全然違うよ!」


麻美は笑いをこらえながら答えた。


「えっ!違うの?・・・でも、私達の生まれる前からって言うから・・・」


多少なりに自分の答えに自信があった弥生は失望した。


・・・あの人って誰なのよ・・・?


考え込む弥生に向かって麻美が言った。


「ちなみにね、あの人は入れ替わった私達の誰の身内ではないからね」


麻美の言葉は、弥生の思考の中の答えとなる人物全てを抹消してしまった。