黒髪の、細くてやんわりとした感触を感じる。 薄闇の中で浮かび上がる影。 俺はその主を見ないまま、人差し指と中指で梳いていく。 「楠木さんの手は、撫でてばっかりいる……」 日常も、行動も、感情も、 今までの毎日も きっとこれからも 俺の全部をひっくり返す、 世界中でたった一人のひと 俺は、