「坂口く…」 言いながら伸ばされる楠木さんの手を払いのける、俺の手。 楠木さんの手は大きい。 なんだってこなす手―――だけど俺は気付いたんだ。 線が細くて、儚いこの手。 それから、 なんにも掴んでない。 小さな、楠木さんの手。 何でも出来る「完璧」な楠木さんなんてどこにも居ない。 きっと無理してるわけじゃない。 だけど、楠木さんは、 楠木さん、 じゃなくて、 「俺」は。