「坂口くんはよくやってくれる」そう笑う楠木さんの俯き加減の表情が薄闇の中で浮かぶ。 綺麗だと、思う。 綺麗だ。 コーヒーが飲めない楠木さん。 はなまるを咲かせる楠木さん。 「ありがとう、坂口くん」 優しい声にぷるぷると首を振れば、知らず知らずに涙がこぼれた。顔が上げられない。 どうして目で追ってしまうんだろう、どうして出会ってしまったんだろう、どうしてそんなに優しくするんだ、 どうして俺は、 どうして、どうして