か、か、か



「(間接キス…!!)」



狙ったわけじゃ、無い。
コーヒーを飲めない楠木さんに、ミルクティーを渡しただけの話なんだから。
あくまでも事故。







不慮だけど、
不覚じゃ、なかった。





「半年になるのかな」
楠木さんの言葉に、一気に現実に引き戻される。
それでも目の前には楠木さんが笑っているから、俺の中の何かが、そっと、ぎゅうっと泣いた。


「え?」
「俺が赴任してきてから」
にこ、と口角を上げた楠木さんは、なんだか綺麗で……少し、哀しげに見える。


「そろそろ、慣れました…?」

おそるおそる聞いた俺はなんだか自分でも情けないけれど、そういった些細なことを気にしないで誰かを傷つけるよりはよっぽどマシだ。




「俺は部下に恵まれてるね」


ふふ、と笑い交じりに言った言葉の意味を取りかねて、頭上にクエスチョンを浮かべる俺。


「慣れたよ、みんなのおかげで」