放課後の体育教官室には、ちょうど夕焼けが差し込んでいる。


「……律樹」
そのオレンジの中、俺の想い人は優しく俺の名前を呼んだ。



「先生」
応えた俺は、自分で思ったよりも真っ直ぐな声だったと思う。


「待ってたんだけど」
「すまん…会議行かねーと、」
申し訳なさそうに額を掻く先生の癖を“あれ”から何度か数えてみようとしたけど大抵失敗に終わっていた。



「アンタ、それで行くの?」

それ、と指差す先には可愛らしい猫耳が相変わらず座っていて。先生の視線に合わせてぴくりと動いた。
「あ……そか、」


うう、と唸るのは先生の仕様。
生徒にはカミングアウトしたくせに、さすがに職員会議には出られないんだと。
「(…そりゃそうだ)」




助け船でも出してみよう。