黒のフルフェイスが完全に明衣さんの頭部を包んでいた。 それが突然こっちを向いて「おかえり」なんてもんだから笑わないわけにはいかない。 「…ファッション」 さらりと呟いた明衣さん。俺は思わず吹き出してしまう。 「明衣さんっ」 すっくと立ち上がった黒メット、もとい明衣さんが俺を見据えた…ように見えた。 「睦月」 「?」 「猫、嫌いじゃなかったよな」 「へ…?…まぁ…それなりに」 なんで、猫? 間の抜けた俺の返事を待たず、明衣さんがさっと手をあげた。