ギリギリ、間に合った。 小学校の前にランプやマフラーを改造しまくったバイクを止められるわけがないから、少し離れた交差点に止めて睦実を抱えて走る。 通勤中のスーツのハゲが何か言いたそうに俺を見たけどガンをつけるだけにして、閉まりかけの校門を視界に入れて…… 「行くぞ、睦実!」 「いーよっ、兄ちゃん!」 睦実を放り投げた。 校門の教師が目を丸くして放物線を描く小学生を見る。 「兄ちゃん、いってきまあす!」 運動場の真ん中で叫ぶ睦実に、俺は小さく手を振った。