オフィスの中には、残業で残っている同僚が2人。先輩が1人。
そんなに狭くは無いし、特に問題はないだろう。
「……っふう、」
きっ、と小さな悲鳴をあげたドアに肩をすくめたが、意を決して開け放つ。
「……〜っ!」
こそこそと端を通って、もう一度給湯室に飛び込んだ俺に降り掛かる災難。
「……わ、わ!?」
明るい部屋に慣れた俺の目には、もう一度踏み込んだこの給湯室は全くの闇だった。
見えない。
見当もつかないよ……。
「坂口くん」
俺の手に触れた温もりが俺を誘った。
「あ…楠木さんだ…」
「そう、こっち…しゃがんで」
言われるままに俺は闇の中で身体を動かす。
あ、ちょっと見えてきたかも。



