優しい声が俺を包んだ。 「…君が、泣いてくれるなんて思わなかった」 「……え、」 「俺のことなのに」 それから、小さな沈黙。 少しだけ目が慣れてきて、楠木さんの身体が闇にうっすらと浮かんでいた。 そうだ。 きっと、泣きたいのは 楠木さんの方だ。 いくら俺が焦ったとしても 結局は他人事。 なのに。